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東京高等裁判所 平成5年(ラ)7号 決定 1993年2月18日

抗告人

テラミックス株式会社

代表取締役

寺田雄紀

相手方

ミネベア信販株式会社

代表取締役

石塚巖

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一本件抗告の趣旨は「原決定を取り消し、相手方の抗告人に対する本件申立てを却下する。」との裁判を求めるというものであり、その理由は別紙記載のとおりである。

二抗告理由は、要するに、「抗告人が執行妨害の目的で基本事件債務者兼所有者名和好子の関与の下に原決定別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)の二階、三階及び五階を占有しているとする原決定の認定判断は誤りである。抗告人の占有は五階だけであり、かつ、相手方(抵当権者)に対抗しうるものである。」というのである。しかしながら、一件記録によれば、右の点に関する原決定の認定判断はこれを肯認することができ、本件保全処分に所論の誤りはない。抗告人は、本件建物の五階を占有しているだけというが、五階のほかに二階、三階をも占有していることは右記録上明らかである(仮に、抗告人が占有していない場合は本件仮処分の執行が不能となるにすぎない。)。また、抗告人は、平成二年一二月三日付けの「建物賃貸借契約書の追加条項及び条文訂正確認書、並びに承諾書」と題する書面及び「建物賃貸借契約書の条文訂正確認書」と題する書面を提出し、抗告人の占有が、右同日、丸健商事株式会社から承継した権原に基づくものであり、相手方(抵当権者)に対抗しうるものであるというが、抗告人がその主張の時点に本件建物を占有していたことを認めうる資料はなく、本件抗告の段階になって初めて提出された右各書面をもって、抗告人の右主張を肯認することはできない。

したがって、抗告人は執行妨害の目的で名和好子の関与の下に右の占有をしているにすぎない者であるから、名和好子の占有補助者ということができ、これに対して民事執行法五五条一項に基づき本件保全処分(公示を執行官に命じたことも含めて)を命じた原決定に違法はない。

よって、本件執行抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人の負担として、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官岩佐善巳 裁判官小川克介 裁判官市村陽典)

別紙執行抗告状

抗告の趣旨

原決定を取消し、申立人の申立てを却下するとの裁判を求める。

抗告の理由

1、上記命令は抗告人を、名和好子の占有補助者と認定しているが、抗告人はその様な地位にある者では無い。独立した占有者である。その占有権原は賃貸借契約によるものであり、何ら名和好子の意をくんでのものでは無く、また当然ながら、執行妨害の為のものでは無い。よって抗告人は民事執行法第五五条に言う債務者(あるいは所有者)では無い。したがって本件保全処分は取り消されるべきである。

2、また抗告人が占有している場所は五階である。この占有権原は賃貸借契約に基づくものであり、この賃貸借権は、丸健商事株式会社が有していた賃貸借権の譲渡を受けたことにより取得したものであり、本来、抵当権者に対して対抗しうるものである。

3、以上によりまして、本件決定は取り消されるべきである。

4、添付書類

イ、建物賃貸借契約書の追加条項及び条文訂正確認書、並びに承諾書

ロ、建物賃貸借契約書の条文訂正確認書

以上

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